文字書きさんに100のお題
【前記】
このたび、Project SIGN[ef]Fさんのところで配布されている、「文字書きさんに100のお題」というテーマを拝借いたしました。
題詠という形式を取っているものの、テーマの言葉そのままの短歌と、テーマを連想させるように詠んだ短歌とがあります。
お読みになった貴方の心に、ナニカが生まれますことを祈りつつ…。
―――――――――――――――
001:クレヨン
真っ白な画用紙広げて吾の恋を
002:階段
我知らず鼻歌
003:荒野
時々はつまらぬ嫉妬に吹き荒れるお馬鹿さんだと笑われるかな
004:マルボロ(紙巻煙草のブランド名)
しなやかな指が煙草を
005:釣りをするひと
ねぇ上手く僕は釣られてしまったね今じゃすっかり君の
006:ポラロイドカメラ
ポラロイドカメラを心に隠し持つ君の眼差し焼き付けたくて
007:毀れた弓(こわれたゆみ)
恋の矢を引く勇気すら持てぬ僕
008:パチンコ
キラキラと空に投げ上げ光る玉落ち行く刹那君を映して
009:かみなり
サヨナラを言い出せなくていつまでも心に雷雨唇を噛む
010:トランキライザー(抗鬱剤、精神安定剤)
綱渡りみたいな恋をしてきたねトランキライザー僕だけの君
011:柔らかい殻
柔らかな殻を破って今ここに傷つく勇気で踏みだそう
012:ガードレール
僕たちの心の距離も消し去ろう雪にまぎれた垣根のように
013:深夜番組
夜も更けて仄かに灯るブラウン管ナニシテルカナふと君想う
014:ビデオショップ
ロマンスの棚に並んだDVD今に見てろと宣戦布告
015:ニューロン(精神機能を営む構造体)
気付いてる?僕らを繋ぐニューロンは繋いだ二人の手だってことを
016:シャム双生児(腰が接合した二重胎児)
君と僕まるで双子のようだねと額を合わせ視線を交わす
017:√(ルート、平方根)
この気持ちなかなか割り切れずにいるよまるで
018:ハーモニカ
ピカピカに光るフォルムと澄む音色空に溶け込むハーモニカ
019:ナンバリング(番号を振ること)
何気ない日常生活気が付けば君の優先順位が1位
020:合わせ鏡
いつだって君は背中を向けてたね合わせ鏡の世界みたいに
021:はさみ
この恋を断ち切る
022:MD
MDがクルクル回転する
023:パステルエナメル(絵の具の一色、象牙色)
君の肌まるで象牙のようだねと指先這わせ唇寄せる
024:ガムテープ
弱い僕いつかは強くなれるかな君という名の補強テープで
025:のどあめ
傷ついた気持ちを癒すのどあめの君をこの手に引き寄せた
026:The World
君という人が生まれた今日この日世界をぎゅって抱きしめたいよ
027:電光掲示板
スクロールされては消えていく記事を君と眺めた
028:菜の花
菜の花の黄色い揺れに誘われて陽光の土手春を探して
029:デルタ(三角。正しい表記はΔ。小文字はδ)
水底を転がる小石のようにホラ僕の三角Δいつかは丸く○
030:通勤電車
その揺れにこの身ををまかせたままでいる平安というぬるい世界で
031:ベンディングマシーン(自動販売機)
ワンプッシュそれで恋が買えるなら僕はコインを使うだろうか
032:鍵穴
合い鍵をキーホルダーから取り外す僕らの恋が終わりを告げた
033:白鷺
今まさに飛び立とうとする白い鷺明日という名の希望に向けて
034:手をつなぐ
言い出せぬ僕の想いを秘めたまま重ねた影で手をつなぐ
035:髪の長い女
ほんのりと桜色に染まる首筋を君に見せたく髪かき上げる
036:きょうだい(変換自由)
ねぇもしも僕らがきょうだいだったなら…例え話の昼下がり
037:スカート
頬染めて嬉しそうだねスカートを揺らせて踊る春風ダンス
038:地下鉄
白線の内側三歩下がってるそんな恋だと独りごちる
039:オムライス
黄身という衣がいるからこその恋メインディッシュの二人でいよう
040:小指の爪
不安げに君がからめてくる小指雑踏のなかそこだけの真実
041:デリカテッセン(お惣菜屋。独語)
そうまるでデリカッセンを選ぶようにふとした日常恋を見つけた
042:メモリーカード
君のこと全て覚えておきたくて心のメモリーどんどん増える
043:遠浅
044:バレンタイン
今日こそは君に好きだと伝えよう菓子屋のイベント乗ってやるぞと
045:年中無休
コンビニのような人ねと君は言う「君こそどうなの?」聞けずに終わる
046:名前
お願いがあるんだ些細なことだけど名前を呼んでちゅっ☆てして
047:ジャックナイフ
手に入れることのできない恋ならばジャックナイフで切り裂いて
048:熱帯魚
覗き込む水の世界の向こう側熱帯魚ごし君の
049:竜の牙(龍でも可)
その牙で僕の
050:葡萄の葉
鬼ごっこするみたいに君駆けて行く葡萄が揺れる艶やかな午後
051:携帯電話
ケータイを掌に抱き眠ります夢で逢瀬を重ねたいから
052:真昼の月
君という人が真昼の月ならば僕は見えない星になりたい
053:壊れた時計
あの日から時計は壊れたままなんだやり直そうと言う勇気なく
054:子馬
055:砂礫王国
風吹けば
056:踏切
あと一歩近づくことができなくて遮断機下りたままの二人
057:熱海
カラコロと下駄の
058:風切羽(かざきりばね。鳥が飛ぶ為の羽)
気が付けば
059:グランドキャニオン
赤茶けた岩肌向かい立つ背中声かけられずに見守ってたよ
060:轍(わだち、車輪の跡)
うっすらと走る
061:飛行機雲
パイロットになることが夢だった君の瞳に飛行機の雲
062:オレンジ色の猫
縁側で寝ころぶ猫の背を撫でて何故かな君を想い出したよ
063:でんせん(漢字は自由)
この気持ち君に伝染すればいい惹かれあうのを止められぬように
064:洗濯物日和
清潔で真っ直ぐな君そうまるで洗い立てのシーツのようで
065:冬の雀
庭先にポツリと一羽冬雀おまえも誰かを捜しているの
066:666
堕天した天使のごとく二人して堕ちていこうかこの暗闇を
067:コインロッカー
人知れず秘めた想いを閉じこめる鍵は君に預けようかな
068:蝉の死骸
ひと夏の恋だと割切れられるほど器用じゃないんだ僕たちは
069:片足
片足でバランス取って立つ背中孤独な
070:ベネチアングラス(ベネチア原産の切子硝子細工)
君の
071:誘蛾灯
072:喫水線(船が水に浸かっている深度を示す線)
落書きのように溢れてくる想い
073:煙
ゆうらりと君が紫煙を吐き出してその唇でサヨナラを言う
074:合法ドラッグ
君なしで生きられぬほど弱虫な僕にとっての君はドラッグ
075:ひとでなしの恋
略奪をしてでも手に入れたいというひとでなしの恋僕は溺れる
076:影法師
友達のままの二人の影法師重ねてそっと恋人にする
077:欠けた左手
今更に君を失うことの意味ほどいた左手
078:鬼ごっこ
いつまでも君を捕まえられずいる気まぐれ天使に愛しさ
079:INSOMNIA(不眠症)
君からのメールを幾夜と待ち続けいつしか僕は眠れずにいる
080:ベルリンの壁
僕たちの心の壁もいつの日か壊せるときがやってくるかな
081:ハイヒール
背伸びしてハイヒール履く君のこと微笑ましいと思ってるんだ
082:プラスチック爆弾
いつだって君は小さな爆弾さドキドキ詰まったおもちゃ箱
083:雨垂れ
君を待つ耳を打つのは雨の音憂鬱さえも洗い流して
084:鼻緒
夏祭り鼻緒が切れたと
085:コンビニおにぎり
お手軽に入手可能な恋なんて願い下げよとあっかんべー
086:肩越し
こんなにも
087:コヨーテ
草原を自由に走る狼に憧れたままネクタイ結ぶ
088:髪結の亭主(映画のタイトル、また妻の尻に敷かれる夫)
君と観た映画のタイトルなんてもう忘れたいのに忘れられない
089:マニキュア
僕の部屋倒れた空のマニュキュアがもういない君いつまでも待つ
090:イトーヨーカドー(スーパーマーケット)
君越しに幸せそうな家族見る不確定要素な未来見る
091:サイレン
近づけば火傷をしそうな恋なのに止められぬまま明滅をする
092:マヨヒガ(山奥の打ち捨てられた廃屋)
行き先も未来も分からぬ恋ゆえに迷ひ迷ひて口笛を吹く
093:Stand by me(映画のタイトル、曲のタイトル。わたしのとなりにいて、の意)
ずっとだよ僕の隣りにいることを約束してねと君が云う
094:釦(ぼたん)
掛け違えたままの
095:ビートルズ
ビートルズ曲名知らずに口ずさむ君が好きだと告白を
096:溺れる魚
君という海にたゆたうちっぽけな僕は溺れる魚のようで
097:アスファルト
098:墓碑銘
あの頃の君と同じ
099:ラッカー(缶入りのスプレー塗料)
ラッカーで落書きよりも簡単に僕の心に君入り込む
100:貴方というひと
いつまでも消し去ることのできぬものそれが貴方という
―――――――――――――――
【後記】
当初は100首全てを新作にしようと思っていたものの、どうしても気に入っている短歌や思い入れのあった短歌などを使いたくて。
こういった形の企画は初めてでしたが、
自分なりに頑張れたのでは…と思います。
最期までのおつき合い、有り難うございました。